Cross Talk
クロストーク
司会
認知症ケアチームの活動をお話して頂きたいと思います。
どのような活動をしていますか?
小杉
日本は超高齢社会を迎えていて、2025年には高齢者の5人に1人が認知症と言われています。認知症の方が入院すると、住み慣れた場所から見も知らないところに移ることで認知機能の低下が起きてしまいます。記憶力の低下や判断力の低下、不安な気持ちから暴れてしまったりすることもあります。そのため、入院したときに何をされるかわからない不安や恐怖心を取り除き、安心して入院生活が送れるように、ケアチームプランや看護計画を立案して、こういうふうに患者さんに関わって、安心して入院生活を過ごせるようにしていきましょうね、というのが主な目的です。
谷村
病棟に各一名認知症ケアチームメンバーがいますが、メンバーは専門の研修を受講しています。その研修内容や認知症についての知識を自分だけがわかっていても意味がないので、スタッフに伝達講習をしたり、カンファレンスで、このような方にはこういった対応をした方がいいだろう等、みんなで話し合い共有するようにしています。
松井
HCUではほとんどの病態で全身状態が悪いです。ご高齢の方も多く、認知症の方が90%と言われています。そのため、認知症ケアが上手くいくかどうかは人それぞれでやってみないと分からないところがあるので、スタッフと知識を共有しながら実践して、患者さんに合った方法を取り入れています。難しい症例や上手くいかなかったことは認知症ケアチームに持ち帰ってメンバーとカンファレンス等を通して見直しています。
司会
具体的にはどういうことがあるのですか?
小杉
例えば、深夜に緊急入院された患者さんがいたのですが、その方は認知機能の低下が見られていて、ベッド上安静の指示がでていましたが歩いてしまい、病棟の看護師は安静が保てるようにと体幹抑制をしました。その報告を受け、「それは余計に不安になる」と思い、その患者さんのお部屋に伺ってしばらく一対一でお話をしていると混乱していた様子が徐々に落ち着かれてきました。そのあとの記録を追ってみると、日中は落ち着いてお話をされていたということが分かりました。 やはり、自分がどういう状況か分からない中で、看護師が来るとそれだけで恐怖だと思います。ゆっくりお話しを聞いて、「お家ではどんなことしてたんですか?」とか「どんな食べ物好きですか?」など他愛のない話でいいので、患者さんに安心感を持ってもらうような取り組みをしています。私はチームで話し合ってスタッフ1人1人にアドバイスができればいいと思っています。
司会
入院時に認知症だと分かっているのですか?
小杉
診断されている方もいらっしゃいますし、高齢者は、場所が変わっただけでも怖くてしょうがなく、「ここはどこだろう」という状況に陥ってしまいます。そういった不安をなくすために、例えば入院直後はご家族にしばらく付き添って頂くなど、工夫をしています。
司会
私も親族が認知症になり入院していたときに食事が大変でした。看護師さんも大変だなって思います。私の親族は食事が目の前にあっても食べていないとか、出てこないと言ったりしたことがありましたけど。
松井
そういう事例はありますね。
谷村
見てもそれが食べ物だと認められない、認識しないという症状もあります。
松井
食べた、食べていないを争うのは不毛ですよね。
小杉
お腹が空いたことを認めてあげる、「お腹空いているのですね」って。
谷村
お腹が空いていることがそういう表現になってしまうことがありますね。お腹が空いたことを「食べてないんだけど!」って。
司会
患者さんにとっては認知症ケアっていうのは、治療しなきゃいけないこととはまた別にあるということですよね。
松井
認知症やせん妄は死亡率をあげるって言われているので、チームを設立してケアとしてしっかり対応していかないといけないのかなと思いますね。
司会
チームを中心に色々な事例をみなさんで共有しているんですね。
小杉
事例検討をしたり、認知症ケアの手引書があるので困ったときはカンファレンスで手引書を開いて、こういうときにはこういう対応方法があるよって、スタッフ1人1人に啓蒙しています。
司会
若い看護師さんはまだ上手く話せないのではないですか?
谷村
意外に、新人の方が患者さんに寄り添った優しい話し方をしますね。
小杉
ないがしろにしないで、立ち止まって患者さんの話をよく聞いてねと啓蒙しています。
司会
看護師さんがお話してくれると患者さんは安心しますよね。
私も家族としてお見舞いに行くと看護師さんと患者である親族とが喋っている姿を見ると安心します。親切にしてくれているんだなって。そこが一番家族としては不安なので。
小杉
確かに。ご家族には「こういう状態でしたよ」とか一言返すようにしています。それでご家族も安心してくださるかと思います。
司会
退院時に、ご家族にアドバイスしているのですか?
小杉
認知症の方は施設から入院されてくることが多いんです。
谷村
こういう経過を辿りましたと記録しているサマリーがあるのですが、その中に認知症ケアチームや担当看護師が、その方への対応方法を要約して記載しています。それが次の施設にそのまま引き継がれています。
司会
その他に認知症ケアチームの取り組みはありますか?
小杉
オレンジリングかな?オレンジリング活動を奇数月にやっています。
谷村
オレンジリングは「認知症の研修を受けましたよ」っていう証明になります。
松井
ご家族も受講できオレンジリングを取得できますよね。
小杉
認知症について、認知症の方への接し方などを、病院で1カ月毎に行っています。院内で100%受講を目指しています。今年度は地域の方にも向けて行いたかったのですが、残念ながら新型コロナの影響で行えませんでした。
司会
みなさんは最初から認知症に携わろうと思っていたのですか?
小杉
院内で推薦されました。
松井
そうなんですよ、推薦されました。
小杉
根が優しいんですかね、私たち(笑)
司会
適任っていうことですね!?
小杉
そういうことですかね!!?
谷村
そういった患者さんに関わる機会が多かったっていうのもあるかと思います。 HCUはせん妄の方、自分はSCUで、認知力の低下が症状に出やすい脳卒中の患者さんとの関わりが多いです。
小杉
普段患者さんとの関わりを見て、この人だったら認知症のケアチームに良いなっていうのを選んでくださったのではと思っています。
松井
それはうれしいです!!
司会
先程、「どうしてこの病院に入りましたか?」と新人看護師に聞いたら、インターンシップとか見学に来た時に「患者さんに寄り添っている病院だったから」という回答があったので、そういのは伝わるのではないでしょうか。色々な病院を見学しに行った中で、印象に残ったそうですよ。
小杉
良かった。
谷村
それはプラス評価!
司会
今回学生さんや入職を検討している方に何かメッセージをお願いします。
松井
日本は高齢者がどんどん増えてきていて、必然的に認知症も増えてくると思います。それは病院だけではないと思いますが、病院に関して言えばせん妄と認知症の併発で死亡率をあげると言われています。認知症ケアをすることで必然的に病態の回復も望めることは大変重要ですし、率先してやる気持ちを大切に持って頂きたいです。
谷村
認知症に関わっていて思うことは、認知症のくくりの中でも色々な症状があるので、それぞれ対応の仕方が少しずつ変わってきます。その人の対応を考えたり、方向性を決めることはとても難しいです。学生の方も入職してからそういうところで悩むと思いますが、CCMCに入職してくれるのであれば一緒に相談したり、教えながらやっていきたいと思います。僕がしっかり教えますよ!
小杉
認知症の人だからってことではなくて、やっぱり人としてどう患者さんに接するかだと思うんですよね。認知症の方だから親切にするとか寄り添うとかではなくて、どの患者さんにも寄り添うことは必要だと思います。そういうところで看護師としてだけではなく、社会人として、第三者と関わるときには敬意を持って接するなど、そういうところも指導しています。
「笑顔と安心」という看護部の理念の元、日々私たちも成長していますのでぜひ来てください。
司会
本日はありがとうございました。